受け口(しゃくれ)とは
通常、上の前歯は下の前歯よりも2~3ミリ、前方にあります。簡単に言うと、上の前歯が下の前歯に少し被さっている状態です。 この噛み合わせが逆になり、下の前歯が上の前歯より前方にある状態を「受け口(しゃくれ)」と言います。 食べ物をうまく噛み切れない、発音が不明瞭になる、見た目が気になるといったお悩みがよく寄せられます。
受け口と出っ歯はどっちもなることがある?
受け口は下の歯が上の前歯より前方に出ている状態、出っ歯は上の前歯が下の前歯より大きく前方に出ている状態を指します。
ただ、上の前歯と下の前歯、両方が本来よりも前方に出ていることがあります。これを、「上下顎前突」と呼びます。噛み合わせが合っていたとしても、矯正治療が必要な「歯並びの乱れ」の1つです。
受け口になる、しゃくれる原因は遺伝?
遺伝
顎の大きさや位置は、親から子へと遺伝します。そのため、歯の傾斜よりも骨格の問題(上顎が小さい、下顎が大きい・位置が前方にある等)による受け口の場合は、遺伝が原因となっていることが多くなります。
最初に生えてきた前歯の位置
前歯は6歳くらいで永久歯へと生え変わりますが、そのときに何らかの理由で噛み合わせが逆になり、下の前歯が前方に位置してしまうことがあります。
顎の成長するバランス
上顎の成長が不十分であったり、下顎の成長が過剰になってしまうことで、受け口になることがあります。
舌が短い
舌は、その先端が上の前歯の少し手前に接しているのが正しい位置です。しかし、生まれつき舌が短いと、このポジションがとれず、上顎の成長が不十分になります。
また、舌が本来より下顎の後方に位置している場合には、下顎の過剰な成長を招きます。
口呼吸
口呼吸が習慣になっていると、鼻・鼻骨の機能が不十分となり、その影響で上顎の成長が抑制されます。
加えて、口呼吸では息を吸うときに下が後方へと落ち込むため、気道が狭くなり、これが下顎を突き出す癖を招きます。
こういったことが長期間続くことで、受け口になるリスクが高くなります。
受け口の治療は早い方がいい
受け口は、骨格や習慣、および習慣に影響された顎の成長バランスの乱れによって起こることの多い不正咬合です。 そのため、一般的な歯並びの乱れと比べると、より早期からの治療が必要になります。受け口が気になったときにはすぐに、お子様の将来的な受け口が心配なときには3~4歳頃に、一度受診することをおすすめします。 骨格に大きな問題を抱える場合などは、手術が必要になることもあります。
受け口の治し方
受け口を治すトレーニング
歯並びの改善は、歯科医院での矯正治療が基本です。
ただ、補助的なものとして、あるいは予防的なものとして、ベロ回しのトレーニングが有効です。
ベロ回し
- 唇を閉じた状態で、舌の先端を、右の奥歯の外側につけます。
- 舌の先端を歯列の外側につけたまま、半円を描くように、左の奥歯の外側まで移動させます。
- 今度は左の奥歯の外側から、右の奥歯の外側に向かって、同じように舌を動かします。
- 「①」~「③」を繰り返します。
受け口の矯正
ワイヤー矯正
ブラケットとワイヤーを使って歯を動かし、受け口を改善する方法です。もっとも古い歴史を持つ矯正方法であり、実績も豊富です。
受け口の場合であっても、ほぼすべての症例が適応となります。ただし、装置が目立ってしまう点、食べづらさ・磨きづらさがある点など、デメリットも少なくありません。
マウスピース矯正
透明のマウスピースを1~2週間ごとに交換することで歯を動かし、受け口を改善する方法です。比較的新しい治療法ですが、特に当院でも導入しているインビザラインは世界トップシェアを誇り、実績も豊富です。膨大な症例から導き出された、効率の良い歯の動かし方が可能です。
メリットとしては、目立たない、痛みが少ない、食事・歯磨きの際には取り外せるといったことが挙げられます。一方で、1日20時間以上の装着が必須であり、取り外し式であるがゆえに患者様のご意志も大切になります。
手術
骨格に大きな問題があり、歯を移動させるだけでは根本的な解決にはならない場合には、手術が必要になることがあります。
下顎の骨を切り、後方へとスライドさせた上で、装置を使った矯正治療を行います。
手術が必要になった場合には、提携する病院の口腔外科へとご紹介します。